名古屋地方裁判所 昭和37年(ワ)1737号 判決 1962年11月29日
原告 愛知マツダ株式会社
右代表者代表取締役 岩本銀次
右訴訟代理人弁護士 青木米吉
被告 平野精一
右訴訟代理人弁護士 大友要助
主文
被告は原告に対し金四十八万千百五十八円(但し原告主張の請求の原因たる事実(二)(8)の約束手形金金二万円に該当する金額はその満期たる昭和三十七年十二月二日より前にその遡求権の行われるときは日歩金四銭の公定割引率(銀行率)による割引により該金額を減ずる。)及び内金四十二万千百五十八円に対する昭和三十七年九月二十八日以降、内金六万円(但し右(二)(8)の約束手形金金二万円を含む)に対する昭和三十七年十二月三日以降右各完済に至るまで年六分の割合による金員を支払わなければならない。
原告その余の請求を棄却する。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
原告は被告は原告に対し金四十八万千六百五十八円及び内金四十二万千六百五十八円に対する本件訴状が被告に送還せられた日の翌日以降、内金六万円に対する昭和三十七年十二月三日以降右各完済に至るまで年六分の割合による金員を支払わなければならない。訴訟費用は被告の負担とする。との判決及び保証を条件とする仮執行の宣言を求め、請求の原因として、
(一) 原告は昭和三十六年十一月二十日被告の娘婿にあたる訴外相良義一に六十二年式マツダ号自動車二台を代金金百五十万九千四百六十円で売渡し、同時に代金の内金十六万九千四百六十円を受取り、残額金百三十四万円は昭和三十七年一月より昭和三十八年六月迄の間月賦支払を受くべく右訴外人より右月賦金に吻合する約束手形の振出交付を受け、右訴外人において右月賦金の支払を一回にても怠りたるときは月賦弁済の利益を失い残額一時に支払をなすべきは勿論原告において特別の通知催告なくして直ちに右売買契約を解除して右自動車を引揚ぐるも異議なく、月賦金の完済に至るまで右自動車の所有権を留保する旨の約定をなし、被告はこれが連帯保証をなしたるところ、右訴外人は、昭和三十七年一月分の第一回月賦金金七万三千円の支払をなしたのみにて爾後その支払をなさず、同年二月乃至四月分の月賦金合計金二十一万九千円の内金十万円及び同年五月六月分の月賦金合計金十五万四千円は被告よりその立替支払を受けたるに過ぎず、右訴外人において他にも多額の負債を生じて所在をくらますに至りたるため右訴外人を代理せる被告より右二台の自動車を原告に返還して右売買契約解除方の申出をなしたので、原告は右契約解除により生ずる損害金債権を留保して右契約を解除して右自動車二台を引取りその価格を査定したるところ合計金六十九万八千円であつた。而して原告は右訴外人の債務不履行による契約解除により、右売買代金百五十万九千四百六十円より右返還自動車の査定額金六十九万八千円と原告が右契約解除により右訴外人に返金すべき前記受領金額計金四十九万六千四百六十円を控除せる残額金三十一万五千五百五十円の損害を蒙つたので被告は右訴外人の連帯保証人として原告に対し右損害を賠償する義務がある。
(二) 右訴外人は昭和三十七年三月二十九日被告に宛て(1)金額金二万六千百五十八円、満期同年五月二日、支払地、振出地共に名古屋市、支払場所株式会社東海銀行尾頭橋支店なる約束手形一通(2)金額金二万円、満期同年六月二日、その他の要件右(1)と同一なる約束手形一通、(3)金額金二万円、満期同年七月二日、その他の要件右(1)と同一なる約束手形一通、(4)金額金二万円、満期同年八月二日、その他の要件右(1)と同一なる約束手形一通、(5)金額金二万円、満期同年九月二日、その他の要件右(1)と同一なる約束手形一通、(6)金額金二万円、満期同年十月二日その他の要件右(1)と同一なる約束手形一通、(7)金額金二万円、満期同年十一月二日、その他の要件右(1)と同一なる約束手形一通、(8)金額金二万円、満期同年十二月二日、その他の要件右(1)と同一なる約束手形一通を各振出交付し、被告はこれら約束手形を原告にいずれも拒絶証書作成義務を免除して裏書譲渡し、原告は右(1)乃至(5)の各約束手形を右各満期に右支払場所に呈示したが何れも不渡となり右(6)、(7)、(8)の各約束手形もその支払を得る見込がないので右各約束手形の裏書人たる被告に対し、特に右(6)、(7)、(8)の約束手形については満期前にこれが請求権を行使する。
よつてここに原告は右各約束手形の所持人としてその裏書人にしてその償還義務者たる被告に対し右(二)の各約束手形金合計金十六万六千百五十八円及び右(一)の損害金三十一万五千五百円以上総計金四十八万千六百五十八円及び内金四十二万千六百五十八円に対する本件訴状が被告に送達せられた日の翌日より右完済に至るまで内金六万円に対する右最後の満期の翌日たる昭和三十七年十二月三日以降右完済に至るまで各商法所定年六分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴請求に及ぶ。と述べ、被告の抗弁事実を否認し、証拠として≪省略≫
被告は原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求め、答弁として原告主張の請求の原因たる事実中査定の額を争い爾余の点を認め、右自動車月賦販売契約の連帯保証人として被告の外に名古屋市昭和区東方町三の五片山幸三がいたので被告は同人と共同で保証するものと考えて連帯保証人となつたが今日に至り片山幸三は虚無人であることが判明した。もし片山幸三が虚無人で保証をしないものであれば被告には右保証をする意思がなかつたものであるから該保証は無効である。と述べた。
仍て案ずると原告主張の請求の原因たる事実中査定額を除くその余の点は当事者間に争なく、証人清水清太郎の証言によると右査定額金六十九万八千円は相当であることを認めることができ、被告主張の抗弁事実はこれを認むるに足るべき証拠なく、却つて弁論の全趣旨により真正の成立を認めることのできる甲第一号証当事者間に争のない被告が訴外相良義一の妻の父である事実及び右清水証人の証言によると右抗弁事実は真実性に乏しいので該抗弁は理由のないものとして排斥する。而して叙上認定の事実によると原告に対し被告は右売買契約の連帯保証人、右各約束手形の請求義務者として右(一)の損害賠償金三十一万五千円並びに右(二)の(1)乃至(5)の各約束手形金合計金十万六千百五十八円以上合計金四十二万千百五十八円及びこれに対する本件訴状が被告に送達せられた日の翌日であることが記録上明らかな昭和三十七年九月二十八日以降右完済に至るまで商法所定年六分の割合による遅延損害金及び右(二)の(6)、(7)、(8)の各約束手形金合計金六万円(但し右(8)の約束手形金金二万円についてはその満期たる昭和三十七年十二月二日より前にその請求権の行われるときは公知の日歩金四銭の公定割引率(銀行率)による割引により該金額を減少する。)及びこれに対する右最後の満期の翌日たる昭和三十七年十二月三日以降右完済に至るまで商法所定年六分の割合による遅延損害金を各支払うべき義務のあることが明らかであるので原告の本訴請求は右の限度において正当としてこれを認容し、爾余の請求を失当として棄却し、民事訴訟法第九十二条但書、第百九十六条第一項により主文のように判決する。
(裁判官 小沢三朗)